排卵障害(排卵に影響するもの)

排卵のメカニズム

卵巣機能は、性腺軸といわれる、間脳(視床下部)―脳下垂体―卵巣系という調節経路を介して、正常な機能が維持されています。どこか1か所にでも異常が起きると機能障害が起こります。
間脳(視床下部)は、性腺軸の総監督にあたり、月経初日からGn-RH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)を分泌し、下垂体を調節します。
脳下垂体は、視床下部からGn-RHの指令により、LH(黄体化ホルモン)やFSH(卵胞刺激ホルモン)を分泌します。FSHの刺激を受け、月経期から卵巣内でいくつかの卵胞が成長し始め、月経が終わるころに1つが主席卵胞として成長します。卵胞の成長とともにエストロゲンの分泌が上昇しピークを迎えます。これが刺激となり下垂体からLH(黄体化ホルモン)が大量に分泌されるLHサージといわれる状態となり排卵が起こります。
※卵巣から分泌されるホルモン
・卵胞ホルモン(エストロゲン):エストロン、エストラジオール、エストリオールを3大エストロゲンといい、エストラジオールを指標に卵巣機能の状態を調べるのが一般的とされます。
・黄体ホルモン:プロゲステロン

月経不順について

月経不順の症

生理期間の出血は4~7日間位あります。月経不順の症状としては、月経が月に2回以上ある短周期(頻発月経)、39日以上過ぎても来ない遅延周期(稀発月経)、早まったり遅れたりする不定期などがあります。月経期間については、8日以上続く過多・過長月経、1~2日で終わる過少・過短月経、または無月経などがあります。

月経不順の原因

月経不順の主な原因としては、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、子宮内膜症などにみられる「お血」(血液のめぐりが滞る状態)やホルモン分泌が弱く「腎精」が不足し月経コントロールが不調な場合などが挙げられますが、いずれもストレスや過度の疲労、睡眠不足や体力減退、過度のダイエット、冷え、など様々な要因によっても起こります。

月経不順に対する西洋医学での治療法

患者の年齢、症状の程度、妊娠希望の有無、などを考慮し治療方針が決められます。
排卵誘発剤やピルなどの薬物療法が行われるのが一般的です。

月経不順に対する漢方での対応

月経周期が順調であるために必要な、規則的な排卵と周期をコントロールするホルモンの働きを整えると同時に、体の働きを妨げている要因も改善します。
月経不順の原因は1つとは限らずいくつもの要因が長期間にわたって重なっていることが多く、ホルモン剤などで月経を起こす治療をしていても根本の原因がそのままであれば、本当の意味での月経不順の改善とはいえないでしょう。漢方はあくまでも自力で自然に月経が順調に来る状態を目指すものです。

月経不順と不妊と漢方

月経が不順だからといって、痛みや苦痛により日常生活に大きな支障をきたすことはないでしょう。けれど、妊娠を希望する場合には月経が順調であることの意味は大きいのです。月経は、卵胞の成熟・排卵・黄体期を経て経血の排出を繰り返しています。妊娠を希望する場合には排卵のタイミングが不明だとなかなか受精に進むことができませんし、不妊治療も効率よく進めることができない場合も出てきます。また、月経血の排出による子宮環境のリフレッシュが行われなければ着床にも影響することも懸念されます。
体質的な問題だけでなく、これまでの生活の積み重ねも深く関与しているため、月経不順の改善は一朝一夕というわけにはいきません。
漢方薬による月経不順の治療は、副作用の心配もなく、日常の体調も良くなりながら月経不順を改善していくことが期待できます。健康な体づくりの第一歩として月経不順の解消に漢方をおすすめします。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)について

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の病態

卵巣が白膜の肥厚を伴い、卵巣内に多数の卵胞(ネックレスサインとか数珠状と言われます)が連なって存在し、互いに成長を妨げるため成熟卵が育たず、排卵が困難な状態となったものをいいます。高プロラクチン血症を伴うものもあります。

多嚢胞性卵巣症候群の症状

状態により程度に違いがありますが、月経不順または無月経、不妊、不正出血、多毛、肥満、にきび、男性ホルモン値上昇、インスリン抵抗地上昇などがみられます。排卵しないか、排卵しても不定期なので、基礎体温は低温相が延長し、月経周期も延長します。

多嚢胞性卵巣症候群の原因

医学的には、ホルモンの異常といわれます。多嚢胞性卵巣症候群は、ホルモンコントロールに関わる視床下部で、GnRHというホルモンの分泌が増すことが原因とされています。
多嚢胞性卵巣症候群に対する西洋医学での治療法
病態の改善を目標とした、排卵誘発剤、副腎皮質ホルモン、糖代謝の改善、高プロラクチン血症の改善などの薬物治療のほか、腹腔鏡下卵巣焼灼術など外科的治療が行われます。
多嚢胞性卵巣症候群は、排卵が起こりにくい状態のため、排卵誘発剤を用いて排卵を促そうとすると卵巣過剰刺激症候群が起こる場合があります。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)とは、排卵誘発剤による副作用。卵巣が過剰に刺激されることにより卵巣が腫れたり、腹水や胸水が溜まったり、脳や心臓に血栓症を起こすこともあります。

多嚢胞性卵巣症候群に対する漢方での対応

漢方では、人間のカラダを構成する基本的な要素「気・血・水」のバランスが崩れることが、健康状態を左右すると考えます。多嚢胞性卵巣症候群の場合は、原因を大きく3つのタイプに分けて漢方薬で治療します。
・肝気の乱れ:ストレスやイライラなどが気のめぐりを停滞させることで排卵や月経を停滞させる状態。
・腎の機能低下:卵胞の成熟や排卵を調節する腎の働きが低下したもの。
・水湿による停滞:子宮や卵巣の機能を妨げ、排卵や月経を停滞させるもの。

多嚢胞性卵巣症候群と不妊と漢方

多嚢胞性卵巣症候群では、排卵しにくいことで月経周期も延長し、妊娠のチャンスが少なくなると考えられますが、軽度であれば排卵や月経周期への影響も少なく、短期間の漢方薬の服用で妊娠される方もあります。
漢方薬による体質改善は、内面での少しずつの変化の積み重ねで根気も必要ですが、副作用の心配もなく、根本的な原因から改善することを目的としています。漢方薬でカラダの働きが改善されると、自力での排卵がスムーズになり、排卵のペースが少しずつ改善することが期待できますので、あきらめずに相談していただきたいと思います。

高プロラクチン血症について

高プロラクチン血症の病態

プロラクチン(PRL)は、出産後に乳汁分泌を促進するために分泌されるホルモンで、脳下垂体から分泌し排卵を抑制します。様々な理由でプロラクチンの産生が亢進すると、高プロラクチン血症になります。プロラクチン値は夜間に高く日中に低いという日内変動があります。日中に検査測定しても正常範囲を示す場合を潜在性高プロラクチン血症といいます。また、多嚢胞性卵巣に合併する場合もあります。

高プロラクチン血症の症状

卵子の発育不全、月経不順、無排卵などになることがあります。授乳期でないのに乳汁分泌や、乳頭に白いカスが付くような状態も確認できます。

高プロラクチン血症の原因

向精神薬、胃潰瘍の薬、抗ヒスタミン剤、精神安定剤など薬剤によるもの、脳腫瘍、ストレス、流産や人工妊娠中絶後など様々な原因が挙げられますが、原因不明である場合もあります。

高プロラクチン血症に対する西洋医学での治療法

薬物治療として、ブロモクリプチン製剤「パーロデル」:吐き気、食欲不振などの副作用、テルグリド製剤「テルロン」:吐き気の副作用を軽減、カルゴベリン製剤「カバサール」などがあります。効果がない場合には、手術でプロラクチン産生腫瘍を切除することもあります。

高プロラクチン血症に対する漢方での対応

最も多い原因として挙げられるのはストレスによる気の巡りの停滞です。
イライラや抑うつなど精神的な緊張感が続くと気の流れが滞り、「肝」の働きが弱くなり月経不順や月経前後の不調が起こりやすくなります。乳汁分泌も気血の流れが原因と考えられます。漢方では、個々人の体質や症状に合わせて、肝気の流れをスムーズにさせる漢方薬で治療します。

高プロラクチン血症と不妊と漢方

妊娠を希望する日々は継続的に精神的なストレスがかかった状態ともいえます。気分転換やリラックスする工夫をしながら、漢方薬を服用していくと高プロラクチン血症が改善され排卵や月経周期が安定してきます。漢方は副作用の心配もなく、カラダの内面から自然に整えていくことが可能です。

無月経について

3ヶ月以上生理のない状態をいいます。
無月経には、18歳を過ぎても初潮がない「原発性無月経」と何らかの原因で月経が3ヶ月以上停止した「続発性無月経」とがあります。無月経は基本的には月経不順と同様の対処をしていきます。

視床下部性無月経について

視床下部の機能の異常によって起こる無月経や排卵障害などをいい、卵胞ホルモンの分泌や子宮内膜の発育のある第一度無月経、ホルモン分泌がない第二度無月経があります。原因として向精神薬などの副作用、ストレスなどの心因性、摂食障害や急激なダイエットによる視床下部の機能異常が起きるためとされています。

下垂体性無月経について

下垂体性無月経とは、FSH・LHの分泌がほとんどないためエストロゲンも分泌されなくなり無排卵や無月経となります。原因として、先天性または、高プロラクチン血症や下垂体機能低下症(シーハン症候群)などがあります。

下垂体性無月経について

下垂体性無月経とは、FSH・LHの分泌がほとんどないためエストロゲンも分泌されなくなり無排卵や無月経となります。原因として、先天性または、高プロラクチン血症や下垂体機能低下症(シーハン症候群)などがあります。

卵巣性無月経(早発閉経POFほか)

卵巣の反応性が低下した状態が原因で起こる無月経や排卵障害です。ターナー症候群といわれる先天的なものや40歳未満で閉経となる早発閉経(POF)、などがあげられます。

黄体化非破裂卵胞症候群(LUFS)

黄体化非破裂卵胞症候群(LUFS)の病態

卵巣でできた成熟卵胞から正常な排卵が起こったような状態になるのに、実際は排卵しないで卵巣の中に存在したままの状態をいいます。排卵期にはホルモン変化もあり、黄体ホルモンが分泌され高温相に移行します。

黄体化非破裂卵胞症候群(LUFS)の症状

卵胞は黄体化しているのに排卵していないので、不妊となります。排卵の前後に超音波検査を行い観察することで発見されます。 高温相は10日程度と短い傾向です。黄体機能不全の原因となります。

黄体化非破裂卵胞症候群(LUFS)の原因

腹腔内の炎症による卵巣の癒着、子宮内膜症、ホルモンの異常など。

黄体化非破裂卵胞症候群(LUFS)に対する西洋医学での治療法

月経周期に問題がない場合も、ときにLUFは起こっているようです。頻度の多い場合には体外受精も選択肢となるようです。

黄体化非破裂卵胞症候群(LUFS)に対する漢方での対応

卵胞自体に直接働きかけて排卵させることはできませんが、正常な排卵がより確実に起きるようサポートし、排卵後の授精や着床がスムーズになるよう子宮環境を整えます。漢方では、お血(血のめぐりの停滞)を改善し、気のめぐりを整えていきます。

黄体化非破裂卵胞症候群(LUFS)と不妊と漢方

基礎体温や月経周期からだけでは判別が難しいですが、根本には体の気血のバランスの崩れがあげられます。漢方薬により体質が改善されるとより効率よく排卵することが期待できます。

無排卵・卵巣機能不全

無排卵の病態

様々な原因により排卵しない状態。先天的な卵巣の発育不全症のほか、女性ホルモンの分泌が不調になり卵巣機能不全となって不妊症の原因となります。

無排卵の症状

基礎体温は単相となります。無排卵の状態が続くと無月経、閉経などになる場合があります。

無排卵の原因

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、子宮内膜症、卵巣チョコレート嚢腫、卵巣腫瘍などの病症によるもの、性腺軸の不調によるもの、その他ダイエットや栄養不良などもあげられます。

無排卵に対する西洋医学での治療法

排卵誘発剤やHMG-HCG療法など内服や注射による薬物療法がおこなわれます。
排卵誘発剤を使用した場合、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)や多胎妊娠を起こす可能性があります。また、これらの薬が持つ抗エストロゲン作用の影響により排卵期のおりものの量が減ったり、排卵期になっても子宮内膜が必要十分な厚さにならなくなったりする副作用が出る場合があり、注意が必要とされています。

無排卵に対する漢方での対応

基本的には、生殖、発育、ホルモン活動の役割を担う「腎」の働きを補います。
腎虚(腎の働きが低下した状態)にも様々なタイプがありますので体質に応じて漢方薬を選択肢し「腎」の機能が回復し排卵機能の復調をはかります。
また、思い悩んだり情緒が不安定になったりするなど、ストレスにより「肝気」のめぐりが停滞することで本来の卵巣機能を妨げている場合には、肝気のめぐりを整えることにより排卵しやすい状態に整えていくことができます。

無排卵と不妊と漢方

排卵がスムーズであり、月経周期が安定していることは妊娠の条件ともいえます。漢方薬による体質改善は副作用の心配もなく、着実に排卵の機能を整えることが期待できます。復調してくると生理が順調にくるようになります。基礎体温が二相性になってくると自力での排卵の可能性が高いと考えられます。